## はじめに
棋譜並べとは、プロの実戦棋譜を盤と駒を用いて再現する勉強法である。
棋譜並べでは並べる過程を通じて、プロの思考や指し手の流れを体感することを目的としている。また、符号を読む練習や駒の位置感覚の向上にも適しており、盤・駒・棋譜さえあれば始められる手軽さも魅力だ。

この棋譜並べの質を高めるには、ただ受動的に駒を動かすだけでなく、指し手の意図を推測したりと、能動的に思考しながら並べることが望ましいとされる。そうすることで局面理解が深まり、棋力の向上が促されるという。

しかし実際には、能動的に考えながら棋譜を並べることは容易ではない。意識的に取り組んだつもりでも、気づけば受け身の作業に戻ってしまうことが多いのではなかろうか。

本記事では、棋譜並べにおいて能動的思考が難しい理由を整理し、それを引き出すための方法を試案する。

## 棋譜並べが難しい理由
### 1. 並べること自体が負荷の高い作業
棋譜並べは単純に見えるが、実際には次のような複数の処理を同時に行っている。
棋譜を目で追い、駒の位置と動きを把握し、盤面を確認しながら正確に再現する──これらはいずれもワーキングメモリを使う作業だ。
経験者なら、「今どこまで並べたっけ？」と直前の手を探したり、駒がいつの間にか乱雑になっていた経験があるだろう。これは、並べる作業そのものが脳内のリソースを占有し、他の情報を保持する余裕を奪うためである。

さらに、名局集のような分厚い本を片手に持つ姿勢も地味ながら身体的な負担となる。

こうした要因により、並べるだけで負荷が高く、並行して解説文を読む・局面を深く考えるといった作業は難しくなる。

### 2. プロの指し手は理解が難しい
プロの着手は、入念な戦法研究、鋭い直観、深い読み、棋風による好み、さらには人間的な見落としまで、複数の要因が絡み合って決定される。
この背景をすべて理解するには、高い棋力と戦法の知識が必要であり、級位者〜有段初級者では推察すら難しい場合が多い。

そのため、並べながら「なぜこの手なのか」を考えようとしても、よく分からないまま時間だけが過ぎ、やがて思考自体を放棄してしまう。
結果として、棋譜並べが受け身の作業になり、「ただ駒を動かしただけ」で終わってしまうのである。

### 3. 誤学習のリスク
プロの棋譜は精度が高く、アマの犯すような単純な見落としはほとんどない。それでも、人間である以上、緩手や戦略的な疑問手が指されることはある。
わずかな緩手であっても、それを正しい手だと思い込んでしまえば誤学習となる。この点を気にする学習者も少なくないだろう。誤った知識を取り込むのではないか、という不安が、学習意欲や能動性を削ぐこともある。

## 解決策の試案：自己評価棋譜並べ
以上の課題を解消するため、筆者は「自己評価棋譜並べ」という方法を提案する。

方法はシンプルだ。棋譜並べの際、5手ごとに局面を7段階（勝勢・優勢・有利・互角・不利・劣勢・敗勢）で自己評価し、その記録を残す。並べ終わった後、AI解析を行い、自分の評価とAIの評価を比較する。

狙いは、局面評価を通じて、棋譜並べに<b>能動的な思考プロセス</b>を組み込むことにある。プロの意図を読み解くことは難しくても、駒得・玉の堅さ・手番・駒の利きといった大まかな要素を基に局面の良し悪しを判断することは、級位者でも十分にできる。また、選択肢は7段階しかないため、迷ってもいずれかを選びやすく、級位者でも取り組みやすい。

さらに、自己評価とAI評価を照合すれば、即時的なフィードバックが得られるため、誤学習のリスクを抑える効果も期待できる。

なお、「並べる作業自体の負荷」については、根本的な解消には至らない。ただし、デジタルツール（lishogi、将棋GUIなど）を活用することで、実物の盤を用いた場合よりもUIの補助が得られ、認知的負荷は相対的に軽減されると考えられる。

次の項では実践例を解説する。

## 実践例
ここでは、PC版lishogiを使った実践例を示す。あくまで一例なので、必ずこの方法に従う必要はない。

### 使うもの
- PC版lishogiの研究機能
- 並べたい棋譜

### 手順
#### 1. 研究ページを作成
lishogiの研究機能で1つの研究ページを作り、同じページを2つのウィンドウで開く。

#### 2. 画面配置
下画像のように左右に並べる。右側ページの評価ボタンは下へスクロールすると表示される。
Windowsなら「Windowsキー＋右矢印キー」でウィンドウを自動配置できる。

![](https://i.imgur.com/rb7oOpw.png)

#### 3. 棋譜を並べる
実際に棋譜を並べ、5手ごとに形勢を自己判断し、右画面の評価ボタン（互角なら「Equal position」など）で記録する。

![](https://i.imgur.com/2CyjavA.png)

#### 4. AI解析
並べ終わったらAI解析で答え合わせをする。盤下のグラフアイコン（右から4番目）から解析可能だが、処理に時間がかかる。

![](https://i.imgur.com/aQ2m66r.png)

そのため、検討モードで答え合わせすることを推奨する。指し手右上の〇をクリックすると起動できる。

![](https://i.imgur.com/CDhLvii.png)

自己評価とAI評価の正誤判定は、将棋GUIの評価値に換算して行う。以下の換算表を参考にしてほしい。
### 換算表
<table>
  <caption>局面評価の7段階換算表（将棋GUI ↔ lishogi）</caption>
  <thead>
    <tr>
      <th scope="col">評価</th>
      <th scope="col">将棋GUI（点）</th>
      <th scope="col">lishogi（小数）</th>
    </tr>
  </thead>
  <tbody>
    <tr>
      <td>勝勢</td>
      <td>+1500 以上</td>
      <td>+15.00 以上</td>
    </tr>
    <tr>
      <td>優勢</td>
      <td>+800 ～ +1499</td>
      <td>+8.00 ～ +14.99</td>
    </tr>
    <tr>
      <td>有利</td>
      <td>+300 ～ +799</td>
      <td>+3.00 ～ +7.99</td>
    </tr>
    <tr>
      <td>互角</td>
      <td>-299 ～ +299</td>
      <td>-2.99 ～ +2.99</td>
    </tr>
    <tr>
      <td>不利</td>
      <td>-799 ～ -300</td>
      <td>-7.99 ～ -3.00</td>
    </tr>
    <tr>
      <td>劣勢</td>
      <td>-1499 ～ -800</td>
      <td>-14.99 ～ -8.00</td>
    </tr>
    <tr>
      <td>敗勢</td>
      <td>-1500 以下</td>
      <td>-15.00 以下</td>
    </tr>
  </tbody>
</table>

## 注意点
使用するAIによって、評価値の精度や傾向には違いがある。
そのため、同じ局面でも評価が一致しない場合がある。
例えば、特定のAIは振り飛車を過剰に低く評価することがある。

こうした違いはAIごとの特徴として受け止め、「そういう見方もあるのか」程度に留めるのがよい。
本記事では局面評価は能動的思考のきっかけに過ぎず、AI評価値との照合はあくまで参考情報として扱うことをおすすめする。

棋譜並べにおける能動的学習促進の一提案

## はじめに

7月18日に<b>【将棋】初段になれる教室</b>さんが、「初段になるまで平均２年」という俗説を考察した動画を投稿したので、便乗する形で記事投稿する。

<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">先日のアンケートに関して、ウォーズから実際にデータを採って分析した動画をアップしました！<br>実際のところ、他の人の昇級スピードはどうなのか？<br>実態が分かります。<a href="https://t.co/mjSDLelnge">https://t.co/mjSDLelnge</a> <a href="https://t.co/5kuMLysBgo">pic.twitter.com/5kuMLysBgo</a></p>&mdash; 【将棋】初段になれる教室@東京＆名古屋 (@ShogiShodanSch) <a href="https://twitter.com/ShogiShodanSch/status/1946110787954835634?ref_src=twsrc%5Etfw">July 18, 2025</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>

この動画では「平均２年」という数字のマジックを解き明かしており、非常に興味深い内容だった。
また、動画では簡易的な調査をベースにしていたため、データの精度でやや信頼性に欠けるという意見が散見された。そのため、実証的な研究を紹介し補足する。

## 勉強時間は意味がない？
Howard は、勉強時間がチェスのスキルに与える影響を調べるため、チェスプレイヤー680人を対象にしたアンケート調査を行った。対象とされたのは、FIDE レート対局で 25局以上の対局経験を持つプレイヤーであり（FIDE ではこの時点でレートが確定し、統計的に信頼できるとされている）、そのプレイヤーの ピークレート（最高到達レート） を、複数の変数からどれほど予測できるかを分析した。

分析に用いた変数は以下の通り：
- チェスを始めた年齢
- 真剣に練習を始めた年齢
- 過去の総勉強時間
- 過去1年間の勉強時間
- FIDE大会での累計対局数

分析の結果、レートとの関係が最も強かったのは<b>「FIDE大会での対局数」</b>だった（β = 0.63）。
一方、総勉強時間も有意な関連はあったが、<b>その影響は小さかった</b>（β = 0.16）。
また、過去1年間の勉強時間については、明確な関連は見られなかった（β = -0.07, 非有意）。

とはいえ、総勉強時間に見られた有意性も、実際には「長く競技に関わってきた」ことの影響にすぎない可能性がある。
この点を検証するため、Howardらは350局以上指しているプレイヤー（＝十分な経験を積んだ層）に絞って再分析を行った。

その結果、勉強時間はレートと無関係となり（β = -0.08）、改めて<b>「対局数」こそがより確かな指標</b>である可能性が示された。

ただし、ここから「対局こそ最強の勉強法である」と結論づけるのは行き過ぎである。
なぜなら、この研究が示しているのはあくまで「レートを統計的に予測する際に強く寄与する変数が何だったか」という結果にすぎず、具体的な練習方法そのものの効果や優劣を検証したものではないためである。

Howardは、FIDE大会の対局数を「質の高い練習を行っている証拠」として積極的に位置づけているわけではなく、あくまでも「客観的で測定誤差が少なく、統計モデルにおいて利用しやすい指標」として重視しているにすぎない。
実際、過去研究（Gobet & Campitelli, 2007）を引用する形で、
「（大会に備えるため）大会での対局が意図的な練習（deliberate practice）になることもある」とは触れているが、
これは可能性の紹介にとどまり、Howard自身の主張とは明確に区別されている。

したがって、FIDE大会の対局数は、質と量を区別せず“まとめて捉えることができる”という点で、統計モデルにおける予測指標として有用だった。
少なくともこの研究においては、レートを説明する変数として、総勉強時間よりも安定して機能していたというだけの結論にとどまる。

## まとめ
Howardの研究は、勉強時間という単一の指標では棋力の違いを十分に説明できないことを示している。勉強時間にはさまざまな変数が絡み、単なる累積量では棋力の成長を捉えきれないからだ。

この観点からすれば、「2年で初段」といった目安は、上達の実態を正しく反映しているとは言いがたい。大切なのは年数や時間ではなく、どれだけ意味のある対局経験を積み、適切なフィードバックを得てきたかという「質的な要素」である。

したがって、「何年で初段に達したか」といった数字や個人の成功談を、単純に学習指針とするのは危うい。棋力の向上を考える際には、数値の目安よりも、練習内容の質・環境・本人の意識といった複合的な要因に目を向けるべきである。

## 参考文献
[Howard RW. Practice other than playing games apparently has only a modest role in the development of chess expertise. Br J Psychol. 2013 Feb;104(1):39-56. doi: 10.1111/j.2044-8295.2011.02097.x. Epub 2012 Jan 23. PMID: 23320441.](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23320441/)

勉強時間は、棋力とはどうやら関係ないらしい。

## はじめに

　図のように四間飛車相手に☗４五桂といきなり桂馬を捨て、2筋の突破を図る戦法をポンポン桂、あるいは富沢キックといいます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 6c6d 3g4e" board="paper" viewpoint="black" turn="3" ki2="☗３七桂☖６四歩☗４五桂"></shogi-board>

　居飛車としては飛車先の突破は確実なため、これで攻めつぶせれば簡単なのですが、タダで桂損しているだけにその良し悪しはデリケートなところがあります。
　そこで、いくつかの例を取り上げ、ポンポン桂の成功条件を特定しようと思います。

## 基本図

　本記事においては以下の図を基本図としたいと思います。
<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g" board="paper" viewpoint="black" turn="1" ki2="☗３七桂"></shogi-board>

　比較にあたって以下の条件は固定します。
居飛車は、
・端歩を突いて☖１五角を消す。
・５七に銀を配置し、四間飛車側の歩交換に備える。
・囲いは舟囲いである

四間飛車側は、
・２筋を守る駒が角のみ
・４三銀・４二飛である（☖５一角や☖４二角の筋がない）
です。


## 基本図から☖５四歩
　☖５四歩に☗４五桂と進んだ場合をまずは見ていきます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 5c5d 3g4e" board="paper" viewpoint="black" turn="3" ki2="☗３七桂☖５四歩☗４五桂"></shogi-board>
　以下、☖４五同歩☗３三角成☖同桂☗２四歩までは一直線の進行です。
　四間飛車側の自然な対応は☖２四同歩で、☗同飛と飛車が走れれば一局の将棋です。しかし、☗２四歩には☖６四角の切り返しがあり、以下☗２九飛☖２四歩☗同飛☖１九角成と進めば駒損が激しく先手が悪い展開です。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 5c5d 3g4e 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d B*6d 2h2i 2c2d 2i2d 6d1i+" board="paper" viewpoint="black" turn="12" ki2="☗３七桂☖５四歩☗４五桂☖同　歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖６四角☗２九飛☖２四歩☗同　飛☖１九角成"></shogi-board>
　☗４五桂の前に先に☗２四歩と突き捨てを入れるのも手ですが、☖同角の筋を与えてしまいます。


## 基本図から☖６四歩
　条件を少し変え、基本図から☖６四歩に☗４五桂を見ていきます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 6c6d 3g4e" board="paper" viewpoint="black" turn="3" ki2="☗３七桂☖６四歩☗４五桂"></shogi-board>
　以下、☖４五同歩☗３三角成☖同桂☗２四歩と進みます。今回は☖６四角の筋がないため☖同歩の一択です。似たようでも☖３七角は☗２七飛で角取を狙われます。
　☖２四同歩☗同飛と進みました。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1pp1psbpp/p2p1pp2/5N1P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG4L w - 1 moves 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d 2c2d 2h2d" board="paper" viewpoint="black" turn="6" ki2="☖４五歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖同　歩☗同　飛"></shogi-board>
　ここで四間飛車側の受けの手筋として、☖４一飛があります。以下☗２二飛成には☖４二金と寄せ、次の☖３二金で竜を追い返します。こうなってしまえば、駒損を取り返せないため先手不満な進行です。
　☖４一飛には☗３五歩と桂頭攻めに切り替えるのが攻めを継続させるための手筋で、対して☖４四角には構わず☗３四歩と取り込み、以下☖９九角成☗８八銀☖同馬☗同玉☖４二金☗３三歩成☖同金☗２二飛成☖３二金☗２四竜と進んだ局面は駒損が回収でき先手の主張が通った進行です。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1pp1psbpp/p2p1pp2/5N1P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG4L w - 1 moves 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d 2c2d 2h2d 4b4a 3f3e B*4d 3e3d 4d9i+ 7i8h 9i8h 7h8h 5b4b 3d3c+ 4b3c 2d2b+ 3c3b 2b2d" board="paper" viewpoint="black" turn="20" ki2="☖４五歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖同　歩☗同　飛☖４一飛☗３五歩☖４四角☗３四歩☖９九角成☗８八銀☖同　馬☗同　玉☖４二金☗３三歩成☖同　金☗２二飛成☖３二金☗２四龍"></shogi-board>
　また、☖４一飛に代えて☖４四角と先に３筋を受ける手には、☗６六銀で角成をふせぎつつ次に☗５五銀のぶつけを狙って先手十分です。

## 基本図から☖１四歩
　☖１四歩に☗４五桂を見ていきます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSPN2/1BK1G2R1/LNSG4L w - 1 moves 1c1d 3g4e" board="paper" viewpoint="black" turn="2" ki2="☖１四歩☗４五桂"></shogi-board>
　以下、☖同歩☗３三角成☖同桂☗２四歩と進みます。これまでの知識から、☗２四歩には☖６四角と打てそうですが、☗５五角と合わせることができます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSPN2/1BK1G2R1/LNSG4L w - 1 moves 1c1d 3g4e 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d B*6d B*5e" board="paper" viewpoint="black" turn="8" ki2="☖１四歩☗４五桂☖同　歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖６四角☗５五角"></shogi-board>
　以下、☖５五同角☗同歩☖２四歩☗同飛☖２二歩と進みます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g4l/1ks1gr3/1ppppsn2/p5pRp/4Pp3/P1P3P1P/1P1PSP3/2K1G4/LNSG4L w BPbnp 1 moves P*2b" board="paper" viewpoint="black" turn="1" ki2="☖２二歩"></shogi-board>
　以下、考えられる筋として、
①☗３一角には☖１三角☗４二角成☖２四角☗４三馬☖同金で後手有利です。
②☗３五歩には☖１三角☗１四飛で一度☖２三歩と飛車の退路を塞ぎ、次の☖２二角を狙って後手十分です。
③☗２三歩には☖１三角☗２九飛☖２五桂打で難解な形勢です。


## 先手の工夫
<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 5c5d" board="paper" viewpoint="black" turn="2" ki2="☗３七桂☖５四歩"></shogi-board>
　この局面ですぐに☗４五桂と跳ねるのは６四角があるため失敗しました。そこで、☗６八金と金無双に構えつつ1手パスします。
　
<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 5c5d 6i6h" board="paper" viewpoint="black" turn="3" ki2="☗３七桂☖５四歩☗６八金上"></shogi-board>
　次に☖６四歩なら☗４五桂と跳ねることができ、以下☖４五同歩☗３三角成☖同桂☗２四歩☖同歩☗同飛と進みます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 5c5d 6i6h 6c6d 3g4e 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d 2c2d 2h2d" board="paper" viewpoint="black" turn="11" ki2="☗３七桂☖５四歩☗６八金上☖６四歩☗４五桂☖同　歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖同　歩☗同　飛"></shogi-board>
　ここで後手は☖４一飛の受けを使いたいところですが、☗３五歩で桂頭を攻められるため☖４四角と打ちます。次に角成を見せられているため☗７七角と打ち、☖５五歩☗同角☖同角☗同歩☖３七角☗３五歩で攻めあって一局の将棋です。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 5c5d 6i6h 6c6d 3g4e 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d 2c2d 2h2d B*4d B*7g 5d5e 7g5e 4d5e 5f5e B*3g 3f3e" board="paper" viewpoint="black" turn="19" ki2="☗３七桂☖５四歩☗６八金上☖６四歩☗４五桂☖同　歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖同　歩☗同　飛☖４四角☗７七角☖５五歩☗同　角☖同　角☗同　歩☖３七角☗３五歩"></shogi-board>

　☗６八金は駒の連結を良くする価値の高い手なので、他の場合で試したいと思います。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 6c6d" board="paper" viewpoint="black" turn="2" ki2="☗３七桂☖６四歩"></shogi-board>
　この局面で☗４五桂は成功しましたが、更に良い条件を求めて☗６八金と指す手を見ていきます。
　次に☗４五桂と跳ねれれば先手良しですが、ここで後手には☖１四歩があります。
<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 6c6d 6i6h 1c1d" board="paper" viewpoint="black" turn="4" ki2="☗３七桂☖６四歩☗６八金上☖１四歩"></shogi-board>
　以下、☗４五桂には☖同歩☗３三角成☖同桂☗２四歩☖同歩☗同飛と進み、☖４一飛と受けることができます。
<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 6c6d 6i6h 1c1d 3g4e 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d 2c2d 2h2d 4b4a" board="paper" viewpoint="black" turn="12" ki2="☗３七桂☖６四歩☗６八金上☖１四歩☗４五桂☖同　歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖同　歩☗同　飛☖４一飛"></shogi-board>
　☖４一飛の受けには☗３五歩と桂頭攻めを行うのがこれまで見てきた攻め筋ですが、今回は☖１三角があり、以下☗２三飛成☖３五角で歩をかすめ取られてしまいます。

<shogi-board header="true" black="先手" white="後手" kif="position sfen ln1g3nl/1ks1gr3/1ppppsbpp/p4pp2/7P1/P1P1P1P1P/1P1PSP3/1BK1G2R1/LNSG3NL b - 1 moves 2i3g 6c6d 6i6h 1c1d 3g4e 4d4e 8h3c+ 2a3c 2e2d 2c2d 2h2d 4b4a 3f3e B*1c 2d2c+ 1c3e" board="paper" viewpoint="black" turn="16" ki2="☗３七桂☖６四歩☗６八金上☖１四歩☗４五桂☖同　歩☗３三角成☖同　桂☗２四歩☖同　歩☗同　飛☖４一飛☗３五歩☖１三角☗２三飛成☖３五角"></shogi-board>
　以下、☗３三竜には☖４四角、☗８八角には☖４二金で受かります。

## まとめ
　これまで紹介した例から、ポンポン桂を行うにあたって良くなる要素と悪くなる要素をまとめると、

☖５四歩...それほど影響しないが、突いていないほうが☗５五銀と出る筋があるため少し良い。
☖６四歩...☖６四角の筋を消すために、突いてあると良い。
☖１四歩...☖１三角と設置できるため、突いていないほうが良い。

　以上でこの記事を終わります。

ポンポン桂の諸知識（右銀形）

自作次の１手

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